『アテンション・エコノミーのジレンマ 〈関心〉を奪い合う世界に未来はあるか』
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私たちは本当に「自己決定」ができているだろうか?
人々の「関心」が価値をもち取引される世界――アテンション・エコノミー。
この情報空間が私たちの自己決定から民主主義の行方までを左右する。
デジタル社会の法秩序論(憲法学)の第一人者がその突破口を探る。
【目次】
第1章 変容する言論空間
対談――メディアに与える影響 新谷学(株式会社文藝春秋取締役・総局長)
対談を終えて ナビゲーションを受ける自由と、ナビゲーションからの自由
対談――コミュニケーションの変容と法(code) 水谷瑛嗣郎(関西大学社会学部准教授)
対談を終えて 情報空間に対する国家の“現れ”という難問
第2章 個人情報と広告
対談――アテンション・エコノミーとプライバシー・個人データ保護 森亮二(弁護士)
対談を終えて 個人データに対する主体性は必要か?
対談――広告ビジネスの行方 馬籠太郎(株式会社電通デジタル)
対談を終えて 「クリエイティブ」は本当にクリエイティブなのか?
第3章 認知の仕組みと自己決定
対談――認知神経科学から見た認知と自由 下條信輔(カリフォルニア工科大学 ボルティモア冠教授)
対談を終えて 「やわらかいクッション」による対抗と「自由」
第4章 生成AIがもたらすもの
対談――生成AIが人に与える影響 栗原聡(慶應義塾大学理工学部教授)
対談を終えて 憲法AIと民主主義
第5章 民主主義の再考
対談――これからの民主主義 結城東輝(弁護士/スマートニュース株式会社)
対談を終えて 「民主主義」の均衡(バランス)を再定義する
第6章 ネット空間の行く末
対談――インターネット文化と思想 木澤佐登志(文筆家・ブロガー)
対談を終えて 私たちが向かう場所、そして憲法――あとがきに代えて
第3章 認知の仕組みと自己決定:下條信輔(カリフォルニア工科大学 ボルティモア冠教授) サブリミナルにもレイヤーがある
刺激はあったが注意が向いていないために報告できずサブリミナルと同様の状況になることがあり得る
結果は自覚していても原因がわかっていないケースも多い
自由意志と操作は両立する
憲法や法学でもそれなりに人間の脆弱性を着目してきている
いまだに強い個人論が優位だが、弱い個人論の影響も受けている
オデュセウスのような弱いけど強い個人像もある
潜在認知は型にはまった行動をとるので、その型を知ることで意図的に健在レベルで対抗することはできるはず
第4章 生成AIがもたらすもの:栗原聡(慶應義塾大学理工学部教授) 学習データの量やAIの大きさをべき乗的に大きくし、AIを構成するニューラルネットワークのサイズを極端に大きくしたら突如AIの能力が急上昇した
ChatGPTを開発後、1年かけて反社会的や倫理に反することを言わないようにひたすらトレーニングをしていた
生成AIを使うためにはちゃんとした文章を書かないといけない
tks.iconこの本出たのは2024年8月だけど、今も同じような状況なのだろうか
命じるままに動く道具的AIではなく、自律性・能動性のあるドラえもん型AIが求められる
道具への信頼は制御可能性に対する信頼だが、のび太からドラえもんへの信頼は心の信頼
お釈迦さま的AIは立憲主義と類似している
既にAI業界では憲法AIと開発が進んでいる
第5章 民主主義の再考:結城東輝(弁護士/スマートニュース株式会社)
弁護士でスマートニュースに所属している方
2023年8月に対談
民法テレビ局はジレンマに苦悶することが制度的に要求されているが、プラットフォーム企業の場合悩みが制度化されていない
EUの法律ではAI企業にアルゴリズムの主要パラメーターの開示を義務づけている
食べ物については食品表示法があるのに、情報についてはない
食事の合理的な選択可能だけど、情報については難しい
民主主義では国民の同意が正当性(レジティマシー)の源泉としているが、プラットフォームやアルゴリズム・AIは数理的・統計的な確率を正当性の源泉としている
システム2を意識的に働かせるタイミングを重要な政治的なモメント(時期)に限定する
tks.icon今は完全に逆
二重過程理論を政治学・憲法学に当てはめたようなブルース・アッカーマンの「二元的民主主義論」
公的市民と私的市民
アテンションエコノミー時代の政教分離
政治はアルゴリズムで数理的・確率的に決める
それで処理できない・すべきでない問題を公的市民として、システム2に基づく熟慮的意思決定を行う
共感を生み出す一つのファクターはローカルネス
ネットユーザーの方が他者への意見に対して不寛容さを示していなかった
辻大介『ネット社会と民主主義』
意見の分極化は生じていても他者の意見に対しては寛容であるが両立している
スマートニュースのアメリカ版(News from all sides)という機能がある
あるコンテンツが政治的に保守的かリベラルかをシステムが判断する
あるトピックの記事群についてスライダー形式で各視点の記事が表示される
ユーザーはスライダーで左から右に調整しながら選択する
tks.iconいい仕組みだと思った
言論空間でシステム2を働かせるような課金の仕組み
ボストン大学の歴史学者の無料のニュースレターであるLetters from an American
コメント欄に課金させている
tks.iconごりゅごさんがどこかで話していた気がする
エンゲージド・ジャーナリズム
地方紙の報道に対して、購読ユーザーがオンラインで取材のリクエストを送ることができる
エクリチュール(書き言葉)による言論の水増しや操作のリスク
放送では、一見パロール(話し言葉)のように思えるが、生の声ではなく、ある特定の意図を持って編集され、加工されたものが伝達される
インターネットによって、水増しリスクや操作リスクはほぼ野放しになった
第6章:ネット空間の行く末
対談相手は木澤佐登志さん
文筆家
『闇の自己啓発』の共著者
tks.icon読んだことはないがタイトルは聞いたことある
インターネットにおける右派リバタリアンの思想はオルタナ右翼におけるフリースピーチ(言論の自由)と言うイデオロギーに受け継がれている
オルタナ右翼はQアノンはインターネットの再起的なアルゴリズムを利用することでオルグする戦略を取っている
依存症はアーキテクチャやアルゴリズムによって人為的に生み出すことができる
ナターシャ・ダウ・シュール『デザインされたギャンブル依存症』
1980年代の時点でカジノではプラットフォームにおけるターゲティング広告の先駆のようなことが行われていた
人間工学に基づいた建築とアルゴリズムに基づいたカジノマシン
パーソナライゼーションとプレーヤー追跡システム
プレーする前にIDカードをスロットマシンに差し込む→プレースタイルや思考、習性をデータとして蓄積
インターネットカジノのスロットマシンの確率アルゴリズムはほとんど瞬間的に調整できる
しかも、確率アルゴリズムがプレイヤー側からはブラックボックスになっている
それにより運命を自身でコントロール可能な幻想・錯覚を与えることになっている
山本さんからの質問
①民主主義はこのままで持つのか
②自己決定概念の行方
アルゴリズムによって操作されている側面があるのに、「自己決定」を根拠とするリバタリアニズムによって正当化できるのか
tks.icon自己決定「感」が大事だから、あまり気にしていないのかと予想
潜在的認知システムまで含めて「心の自由」と考えるべきという「認知過程の自由」という考え方が説かれるようになっている
ラ・ボエシ『自発的隷従論』:人間は国家が誕生したその瞬間に、自発的に服従を欲望するようになる
エーリヒ・フロムのいう「自由からの逃走」と似ている
資本主義や近代の個人主義は自由をもたらした
しかし、その自由がある意味では重荷になる
そこから逃避するために集団的なものに加わりたいと言う良級が生まれる
それが、ファシズムへの傾倒に繋がるようなことがある
関連: ホルクハイマーとアドルノ『啓蒙の弁証法』:啓蒙理念や理性が抑圧やファシズムに転化していくパラドックス
フロムの「逃走」にはシステム2からの逃走の側面がある
近代はシステム2を強調しすぎたために「逃走」が起こり、アテンションエコノミーは、その逃走を後押ししてしまっている
民主主義は難易度が高い、憲法はそれを前提としている
民主主義は常に自然体でいることを許さず、主権者としての市民性を良級する
多くの憲法は、民主主義が、人間に反自然的な思考・行動を要求するものであることを知っている
「市民」として高尚に振る舞うことが、現実として不可能であることをよく知っている
だから、間接民主主義や違憲審査制などを用いて、常に私たちが主権者でいることを要求しない
つまり、政治制度として「民主主義」を採用しつつ、これを「立憲的」に制御するための仕組みを組み込んでいる
このセットがあり始めて、民主主義は理想的な政治制度であると宣言できる
ビジネスモデルとして刺激的であることを必然的に求めるアテンション・エコノミーは公共など気にしないものを肯定し、広告収入の配分というご褒美を与えて人格的にも承認する
①民主主義はこのままで持つのか
近代啓蒙主義の流れにしがみつき、民主主義をアテンションエコノミーから奪還しよう
EU
↕︎
リバタリアンたちによる加速主義の試み
→次善策として、「立憲的封建制」
民主主義によって構成される国家が、一定の強度を持って残存している
「離脱」ないし選択の権利が保証されるために必要
自律的な自己決定を維持するには民主主義的に構成される国家が必要